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ダスキンのモッp(ryな日々

気まぐれで作ったブログで良ければ…

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ばれんたいんにきみとぼく。後編+おまけ(注:めっちゃ長いです)

いよいよだ。自然と早くなる鼓動を感じながら、ボクは時が来るのを待つ。



放課後、ボクは親友に別れを告げて走り出す。
親友は笑って送り出してくれた。しっかりやりなさいよ、と含みのある言葉を背に受けて、ボクは彼を探して校内を走り回る。
彼とボクの学科は違っていて、今日は彼の方が早く終わっているらしいけど…まだ残っている、という無茶苦茶なな希望的観測を持つしかなかった。


…彼の学科のある棟をしばらく走り回り、もう帰ったかなと思い始めた頃、彼に似た声を聴いた気がしてふと足を止める。
どうやら人気のない教室からのようだけど…一応、確認のためだ、とドアそっと少しだけ開けて中を覗き込む。

少し開いた隙間から差し込む夕暮れ時の朱色の光の中に、彼が立っていた。心臓がドキンと跳ねるのを感じながら、ボクは視覚と聴覚を必死で研ぎ澄ます。
プライバシーの侵害だ、と良心が騒ぎ立てるけど、今回ばかりは黙っててもらおう。

「……のさ、これ…」
と、そうしている間に女の子の声が耳に入ってくる。
ああ、やっぱりか。…そうだよね。
「ん…ありがとう。…で…さ俺達…………だよ」
ききたくない、みたくないのに。
なんであしがうごかないんだろう?
「まあ、それは………ってことで。いいじゃんよ、どう…、……からも……ないでしょ」
「……できないけどさ」
いやだ。いやだ。いやだ。
滲んだ景色の中で、二つの影が抱き合うところを見た瞬間、ボクの体はそこから逃避していた。


走る、走る、走る。
ボロボロと頬を伝って落ちていく水滴を必死に拭いながらボクはただ走る。

「あっ…来た来た…って、どうしたの!?」
どこを走っているのかわからないまま走り続けていると、いきなり抱き止められる。
混乱しっぱなしの脳で滲んだ視界を解析し、理解する。
どうやら、別れた場所で待機していた親友が闇雲に走っていたボクを抱きとめてくれたらしい。
「ひぐっ…あ、あのねっ、ボ…ボクがしてきた…こと、うっ、全部ねっ、無駄になっちゃった……」
嗚咽と息切れに邪魔されながらもボクは必死に言葉を紡ぐ。
親友はどこか沈痛な表情を浮かべて、ボクの肩を抱く。
そのまま移動させられるのを感じながら、ボクはさっきの情景をただ繰り返していた。












「落ち着いた?」
しばらくして、誰もいない教室で親友が聞いてくる。
まだ涙と嗚咽は収まってないけれど一応頷いておく。…これ以上、彼女に迷惑をかけるわけにはいかない。
「で、何があったのよ…」
申し訳なさそうに訊く親友。ボクは、ことのあらましを彼女に告げる。
彼女はしばらく苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていたが、ため息をついてボクに向き直る。
「…んー…何と言うか…。あのね、きっとアンタのやってきたことは、そしてアンタの思いはきっと無駄にはならない」
「確証、もない、のにっ…」
「いいから聞きなさいな」
言い返そうとしたが、真面目な顔で言い返されたのでボクは口を紡ぐ。
「他にチョコ渡している人がいた?だからアンタは諦めちゃうの?そんなことで、諦めちゃうの?」
「ボクだって、諦めたくない…っ!…だけど、それはあの人を困らせるだけだもの…」
「そんなことにはならない。確証は無いってアンタは言うけどさ。それこそ何の根拠もないじゃん。やるだけやりなさい。その後で、泣きなさい。」
「……」
険しい表情で、辛辣な言葉をかけてくる親友をまともに見れずに、ボクは項垂れる。
またあんな絶望を味わえと、この親友は言ってるのか。
そんなどこかもやもやした考えを抱いているのを見据えたように、彼女は少し声のトーンを落とした。




「…まだアンタには、チャンスが残ってるのに」



…ああ、そうだった。
ボクは、彼女の思いも汲んでやるべきだったのに。
…涙を拭ってボクは立ち上がる。どれだけ自分が彼女に酷い仕打ちをしていたのかを思い知りながら、ボクは口を開いた。

「…ごめん。君の、言うとおりだった。ごめん、ごめんね…」
「いいって。…早く、行きなさい」
どこか涙声の彼女にもう一度謝って、ボクは再び走り出す。
顔は酷いけれど、気にしている暇は無い。
ただ、駆ける。








しばらく走って、ようやく彼の姿を見つける。
かなり走り回ったけど、彼がまだ帰ってないのは運がよかった。
だから、ボクはそれに感謝しつつ彼の肩をそっと叩く。
驚いた表情をした彼が、振り向く。心臓が、跳ねる。
勇気を振り絞って、それを言葉にしよう。
胸の前に抱いた、この箱と共に、彼に…

「ん…と、どうしたんだ?」

少しだけ、照れたような困ったような表情で彼が言う。

ボクは、震える唇を、動かす。

「あ、あのね…。キミは覚えてないかもしれないけれど、」

あの時、キミの手が無ければ。ボクは、ここまでこれなかった。

「ボクはずっと、この大学で会うより前からずっと、」

だから、キミにこう言える喜びをかみ締めて、思いを。





「キミのことが、好きでした」






顔が染まる。けれど、まだやりたいことは終わってない。

「だか、ら…これを受け取っ…ふえ?」
出した箱をいきなり取られ、思わずボクは間抜けな声をあげる。
顔を上げれば、懐かしい笑顔があった。

「…俺も、キミのことがずっと好きだった。あの日、君の手を引いたときから、ずっと」

彼は、そう言って、ボクの体を抱きしめる。

「だから、これは君の思いと一緒に、受け止めるよ。ありがとうな」


懐かしい笑顔が、涙で滲む。彼が、「やっぱ泣き虫なのは変わんないな」と優しく笑う。


ちがう、かなしいからないてるんじゃないの、うれしすぎて、しあわせすぎてなみだがでるんだ、って返す。

彼が笑って、ボクをまた抱きしめてくれて。







…唇が、重なった。
















「ったく、あんたは余計なことしてくれたわね…」
椅子に座っている一人の少女が、少し離れたところに立つ少女に呆れたように言う。
言葉をかけられた方の少女は肩をすくめ、言う。
「ただのサプライズイベントじゃん。私もアイツを好きなのは事実だしね。貴女もそれを分かってあの子をけしかけたんだから十分酷いわよ」
「義兄とは言え…こんなところでチョコ渡して抱きつくのをみせつけるのが【ただの】って言う辺りがなんとも…」
「結果オーライよ。うまくいったんだし」
何でもないように答える少女に、椅子の少女は大仰にため息をついた。
「あんたもさっさと仲直りすりゃいいのにね。チョコ作ってたくせn「ど、どうだっていいでしょう、そんなこと!」
視線をあからさまに外しながら言う少女に、椅子の少女は顔を染めて慌てて言う。
それを見てニヤニヤ笑いながら、
「あら恐い。馬に蹴られるのは嫌だから、さっさと逃げるわ」
と椅子の少女に言い残した少女は、あっと言う間に姿を消してすたこらさっさと逃げていった。
「……全く、先が思いやられるわ…」
静かになった教室で、椅子の少女はため息をついて鞄から箱を取り出す。
「でも、あの子が頑張ったんなら…あたしも、頑張らないとカッコがつかないわね」
そして、少女は箱だけだして鞄をもち、教室を後にする。
思い人に、思いを伝えるために。






今日はバレンタインデー。
ささやかな幸せが、たくさん生まれた日。
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  1. 2009/02/24(火) 02:05:27|
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